「先生、次のテストに向けて何を勉強したらいいですか?」

「初めにレッスン4の1の小テストをやりたいと思うんだけど、その前に時間をとるから自分なりに勉強してみてほしい。何分ぐらいいる?」

「10分ぐらいあれば大丈夫だと思います。」

今日の授業はこのような会話からスタートしました。

私は10分待ち、小テストをやってもらいました。

「どう?できた?」

「一通り書きましたけど、多分これは違うと思います。」

「どれどれ。ああ、『いっぱい』とあったから a lot of と書いたのか。でもこれだと動詞が無いから文章としておかしくなる。だから・・・」

私は採点をしながら間違えた問題を解説しました。

 

続いて、Eさんと小テストの総括をします。

「並び替えの問題は全部できていて良かったけれど、穴埋め問題をいくつか間違えちゃったね。」

「新出の単語は覚えたんですけど、熟語はこの欄になかったので落としていました。」

「学校の授業で使っているプリントには何か書いてない?」

「ちょっと見てみます。ええと・・・、あ、書いてありました。学校で先生が説明していますね。」

「僕はそのプリントを見ずに小テストを作ったけれど、重要なところ・テストに出したくなるところは同じなんだよね。じゃあこれを踏まえて、こういう穴埋め問題を解けるようにするにはどんな勉強すればいいと思う?」

「ええと、熟語のある文章だけ抜き出して問題を作ってそれを何度も見直すってのはどうですか?」

「なかなかいいと思う。ただ、全部書き出すのはなかなか大変じゃない?やらなきゃいけない勉強は他にもあるからね。教科書のコピーをとって、熟語のところだけ修正液か何かで消して問題にするといいと思うよ。これなら5分もあればできるでしょう。コピーならそこのコピー機でしてあげるから。」

「わかりました。ありがとうございます。これならあまり時間をかけずにできそうです。」

「プリントを作るのに5分。覚えるのに10分あれば1ページくらいできるでしょう。さっきやった小テストの前に10分勉強してこれだけできたんだから。」

「そうですね。」

「次のテストの範囲はどれくらいになりそう?」

「レッスン3と4全部です。長文は6ページ分ですね。あと、文法問題があります。」

「じゃあ、長文のコピーだけ全部やっておこう。時間のある時に調べて熟語の部分を消しておいて。もし、どこが問題になりそうかわからなかったら教えるから、その時は言ってね。」

「わかりました、やってみます。」

 

やり取りの途中で私は、「ああ、Eさんは何をどう勉強したらいいのか考える力を持っている。」こう確信しました。

コピー機の活用については私が提案しましたが、どんな勉強をすべきか、本質的なところは同じです。

Eさんは自分の考えをまとめきれず、迷っていたかもしれません。

でも、「一人で考え込んでしまって考えがまとまらない」ことは誰にでもあります。

誰かに話すとそれだけで自己解決する。その「誰か」が私であったにすぎません。

 

考えを整理できたことから、「これならしっかりテスト勉強できそうだ。」と、確信が持てたのでしょうか。

Eさんの声が随分と明るくなったような気がします。

もし、私が最初から「教科書のコピーをとって穴埋め問題にして勉強しろ。」と頭ごなしに勉強のやり方を教えたら、Eさんの反応は全く別のことになったでしょう。

生徒とのやり取りを通じ、やる気を引き出す指導というのが本当に大切なのだなと、Eさんを見ていて改めて思いました。

 

「先生、文法の勉強はどうしたらいいでしょうか?」

「それはね・・・」

(続く)